読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

根木珠たまねぎ日記|(旧 There's No Blog)

電子書籍を個人出版している根木珠、思考を垂れ流す。(旧Don't Believe Everything You Read)

掌編「ネギトロー」

「おうおうおう、今日こそは両耳きっちり揃えて貸したネギ返してもらうぞハァアン!?」

 ネギ貸しがシロウのもとへやってきた。

「ひいい、勘弁してつかぁさい! おっ母が病気で薬も買えねぇんでさぁ」

 シロウは嘆願するも、相手は容赦しない。

「知るか! 人様から借りたもん返さねぇたぁどういう料簡でいハァアン!?」

 ネギ貸しはシロウの耳を引っ張る。

「いてて、すみませんすみません! ほんと、来月には必ず……!」

「いいやだめだ、おい、そこの娘、もらってくぞ」

 ネギ貸しの若い衆が、シロウの娘を拐おうとする。
「そ、それだけはどうか……!」
「やめてけれ! おらの姉ちゃんになにするだ!」
「これ、ドク! あたしはいいのよ」
 ドクは姉のチョウをかばうが、チョウはすでに腹をくくっていた。
 するとそこに声が響いた。

「待てーい! そこまでだ!」
「だ、誰だ!」

 

♪ちゃらららら〜ちゃらららら〜ちゃらららら〜(仮面ライダーのテーマ)

 

「お前らの悪行、たとえお天道様が許しても……」
「その声は、ネギトロー!」

「……うん。その通り、ネギトローだ! お前らの悪事、このネギトロー様が許さん!  成敗してくれる!
 あと、ひとの決め台詞は最後まで聞……」

 キーッ

「いて、いててて、やめろ! 指のささくれを剥がすのをやめろ!

 地味に痛いから!」

 キーッ

「くっそー、こうなったら……」

「ネギだー!」

「……うん……んもう! なんで先に言っちゃうんだよ! そうだよネギだよくそっ!

 くらえ、必殺"ネギで殴打"だ!」

 キーッ

「……ふぅ。なんとかやっつけた。そこのひと、怪我はなかったか」

「え、ええ、おかげさまで……ありがとう、ありがとうごぜぇますだ!」

「いやなに。当然のことをしたまでよ」

「ははあ。助かりました……」

「うん。じゃあ、気持ちでいいから」

「……は?」

「だから、気持ちだけでいいから」

「いや、あの、これはその……」

「ん?」

「はい、すみません、今はこれで勘弁してくだせぇ」

「よしよし。じゃあな! 達者で!」

 

「今のひとは……なんだべか……」

「……あいつは根木よ」
 チョウは静かに呟いた。シロウはチョウの顔を見る。
「お前、知ってんのか?」

 それにはドクが答えた。
「このへんじゃ、あいつに逆らったやつはこの村にはいらんねぐなるって、もっぱら噂だ」
「じゃ、じゃあ、あのひとが……」
「んだ。黒幕だ。そんでこれは茶番だ」
「うっ、くっそう……!!」

 悔しがるシロウに、チョウは微笑んだ。
「でも、大丈夫だ。おらがやっといたアレがあっがら」
「なんだべ?」
「さっき擦っといたのさ」
 すっ、とチョウは何かを背中から取り出した。
「そ、それは……」

 

 なんと、深谷ネギだった。

 

 埼玉県の特産である。


(おわり)

 

f:id:pcu28770:20160327210146p:plain
 inspired by
名無しの挽歌

名無しの挽歌