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根木珠たまねぎ日記|(旧 There's No Blog)

電子書籍を個人出版している根木珠、思考を垂れ流す。(旧Don't Believe Everything You Read)

掌編「毒入りひなあられ事件」

掌編 小説 ショート・ショート 創作

「犯人は、あなたですね、権田原さん」
「な、なにを根拠にそんなことを言うんだ岸谷! 許せん!」
「このひなあられに毒を入れられたのは、あなたしかいないからです」
「なんだと……? 昨夜はおれは一人きりで部屋に閉じこもっていたんだぞ。部屋に戻ったのが午後八時ごろだった。それにひろ子さんや五右衛門さん、マイケルやテン・テンだって広間にいたじゃないか! あの時間、ひなあられは広間にあった。そうだろ!」

「ですが権田原さん、そのひなあられには毒は入っていなかったのです。然るべき場所からの情報ですから間違いありません」
ぐぬぬ、然るべき場所からの情報か。そういうことならやむを得ん。しかし、おれがやったという証拠でもあるのかね? たしかにあのとき、あのときというのは部屋に戻るより少し前の午後七時四十五分ごろのことだが、おれとモンゴメリは口論をした! そして殺してやるとは言ったかもしれない。さらには、ひなあられを一掴み、投げつけたりもした。だが本気で殺そうなんて思っちゃいなかった!」
「そうですか。では、これはなんでしょう? おや、領収書のようですね」
「そ、それは!」
「ほう、やはりこれはあなたのものなんですね」
「きさま、それをどこで……」
「入手経路については大人の事情で言えません」
「大人の事情か。なら、しかたないな……」
「ここにあなたの指紋もついているはずです。さあ、やはり犯人は、あなたなんですね?」
「くそう。そうだよおれだよ、おれがやったんだ……。ついカッとなって……。それに普段から思っていたんだ……」
「ひなあられは甘いものだ、と?」
「そうだ! それなのに関西のやつらときたら、甘いひなあられなんてと言ってばかにした! だから入れてやったんだ! これであいつらが糖尿病になればいいのさ!」
「残念ですが権田原さん」
「なんだ!」
「今回集まっていただいたのは、糖質制限の会です。関東風だろうが関西風だろうが、彼らはもとよりひなあられを食べないんですよ」
「な、なんだって……! じゃあ、おれのやったことは……」
「幸か不幸か、被害者はいません」
「そ、そんな……」
「いえ、一人だけいます」
「えっ」
「関東風のひなあられ、おいしいですね。私、はまっちゃいました」
「岸谷……さん……!」

 

 (了)

 

今週のお題「バレンタインデー」