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根木珠たまねぎ日記|(旧 There's No Blog)

電子書籍を個人出版している根木珠、思考を垂れ流す。(旧Don't Believe Everything You Read)

掌編「神隠し」

男は道に迷った。
 歩いていると民家があった。
 寄ってみることにした。

声をかけると返事があった。
 中から若い女が出てきた。
 男は事情を説明した。

招じ入れられ男は家に入った。
 女は名をハナといった。
 二人は話した。

一夜明け、男は再び出発した。
 まだ薄暗い早朝だった。
 霧の濃い小径を歩いた。

女から聞いたほうへ向かう。
 目的地がそこにあるはずだった。
 しかし男は辿り着かなかった。

太陽が天高く昇るころ。
 霧が晴れた。
 男は周りの景色を見た。

何も無い。
 家も森もない。
 鳥も鳴いていない。

東西南北、ただ平野。
 前後左右、進退極まる。

 ここは、どこか。



   私は誰か。




 数年後、山奥にある家主のない家屋が取り壊された。
 白骨化した遺体が一体、見つかった。


(了)