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根木珠たまねぎ日記|(旧 There's No Blog)

電子書籍を個人出版している根木珠、思考を垂れ流す。(旧Don't Believe Everything You Read)

掌編「眠り続ける人の話」

夕方のチャイムの音で目が覚めた。
どれくらい眠っていたのだろう。計算する気にもなれない。
体がだるい。腰が痛い。頭がぼんやりする。頭や背中が痒い。頭を掻くと、白いものが落ちた。ふけが黒いスウェットに映える。
体を掻こうとすると指がかさぶたに触れた。以前にも同じ場所を掻いたのだろう。掻いたあと爪を見ると、あかが溜まって爪の間が黒くなっていた。爪の間に詰まったあかを取る。

喉が渇いている。
百円ショップで買ったコップに水道水を汲み、飲む。
なにか食べ物を買いにいかなければならない。めんどうだ。
もう一回寝ようかと考え布団に潜ろうとする。
何時間寝るんだ、と同居人に叱られる。
自分も同じだけ寝ていたじゃないかと思うが言わない。同居人のいびきがうるさくて何度も目が覚めたことも思い出すが言わない。

着替える。外に出る。意識朦朧としている。足元はふわふわする。コンビニへ向かう。
おでんを選ぶ。頭が働かない。
レジへ持って行く。
すると店員が、からしとゆず胡椒どちらにいたしますかと訊ねてくる。
私は答える。
あ、ゆず……ゆず胡椒で……。
発声するのが久しぶりすぎて、口の筋肉がこわばっていた。
「ゆ」を発話することの難しさを知った。
なんでも体験してみるものだなと思った。

その日はじめての食事を終え、昼夜逆転してはいけないと、いつも通り午後十二時に就寝する。

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