根木珠たまねぎ日記|(旧 There's No Blog)

電子書籍を個人出版している根木珠、思考を垂れ流す。(旧Don't Believe Everything You Read)

翻案 浦島太郎 B面

校舎裏、カツアゲ現場。

不良「出せよ、あんだろ金」
亀 「いえ……」
不良「おい亀、そこでジャンプしてみろ」
亀 「ひっ」

亀、跳ぶ。チャリンチャリンという音。

不良「やっぱあんじゃねえか」

突然、男の声。

男「何してんだ、おまえら」

不良たち、振り向く。
「あんだと」
男、紙幣を出す。
「ま、ま、ここはひとつ」
不良たち、紙幣を受け取る。
「へ、おまえが出してくれんの」
「手切れ金だ」
「いいひとだね、へっ」
「もうこの子に構うな」
「わーったわーった」

不良たち、その場を去る。

「大丈夫かい?」
「ええ……」
「大変だったね」
「はい……」
「ところでこのへんに龍宮城ってある?」
「あ、はい」
「その場所、わかる?」
「案内しましょうか?」
「頼める? 悪いねえ」

二人、龍宮城へ向かう。

「ここです」
「お、もう着いたの? 意外に近いんだね」
「よく言われます」
「やっぱ、あれから繁盛してんの」
「ええ、まあ」
「へえ、さすが浦島先輩だな」
「きょうはなんになさいます」
「うん、いつもの」
「うん」
「かしこまりました」

亀、カルアミルクを持ってくる。

「浦島組もでかくなった」
男が感慨深げに呟く。
「あの玉手箱には参ったけどな」
亀、お追従で笑う。
「取り引きには気をつけろって言っていたのに」
「ええ」
「クスリには手を出さねえ、それが浦島組の方針だからな」
「はい」
「ところでこのカルアミルク、いつもと味、違わねえか」
「えっ。そんなはずはありませんが」
「煙草やめたからかな。味覚が変わったんだ」
「そうなんですか」
「あ、そういえば。乙姫からアレ預かってねえか」
「あっ、はい」
亀、玉手箱を持ってくる。
「これを……」
「ん」

男、龍宮城を出る。
事務所へ向かう途中、玉手箱を開ける。
「ん?」
クスリらしきものが入っている。
どういうことか問いただそうと事務所へと向かう。

その事務所があったはずの場所に着くが、
「な、なん……だと……?」
事務所が無くなっていた。
「ばかな……」
男は愕然とする。

「俺がムショにぶちこまれてる間に……潰されちまったのか……」
男はしばらく佇む。
「久しぶりにシャバに出てきてみりゃあ……」

事務所があった場所は、テナント募集の紙が貼られており、亀は居酒屋の女将さんとなり「龍宮城」をほそぼそと営んでいた。
そして男は、ひとりになった。

「おやっさんがいてくれたから、俺ぁ天涯孤独じゃなかったんだ……」

ただただ、佇むことしかできなかった。
男は再度、玉手箱を開けてみる。
箱は二重底になっていて、底には紙きれがあり、男は読んだ。
「お勤めごくろうさん。これをおめえが読むころには、おれらは高飛びしているだろう。ただおめえさんにも仕事を探してある。

 亀をいじめる仕事だ」

あの亀……俺にカルアミルクを出してくれたあの亀……俺には無理だ。しかし……、義理と人情……。

男は数ヶ月、数年、悩みに悩んで、ついに白髪になってしまったそうな……。

亀は甲羅を脱ぐと、こう言った。
「ふう、あっつい。乙姫と亀の兼業、大変やわあ。髪の毛、臭なってしもたわ。はやいとこ風呂入らな」


(めでたし)