根木珠たまねぎ日記|(旧 There's No Blog)

電子書籍を個人出版している根木珠、思考を垂れ流す。(旧Don't Believe Everything You Read)

翻案 浦島太郎 A面

1 

     いじめられている亀を助ける





 かつてこの地には、亀を助けたのに最後はおじいさんになってしまった浦島太郎という不憫な人がいたのらしい。

 シゲルは得意になって話している。ユウキは、ふうん、と相づちをうつ。

 思うに、とシゲルは続ける。

 あの亀も街の人もみんなグルだったんだよ。

 そんなばかな。ユウキは思う。

 それで、あの浦島太郎とかいう人を陥れたんだよ。

 ユウキは、めんどうくさいので異論を唱えない。

 村ぐるみでやっつけられるほどだから、そうとうの嫌われ者か、あるいはその逆か……。

 逆?

 善意から行動をおこしているんだけど、彼らにとっては不都合なのさ。

 どういうふうに?

 それはわからない。

 わからないんだ。

 うん。

 しばらく会話が途切れる。

 夕焼けが赤く空を染めている。

 かすかに、豆腐屋のラッパが鳴り響いている。

 ユウキの前を歩いていたシゲルは、はたと立ち止まり、振り返る。ユウキを見、そして口を開く。




 



     海老が性転換する





 あの、

 シゲルはそこで息を、深く深く吸う。

 あのね、ユウキのことが、

 ユウキは立ち止まり、うろたえる。 

 シゲルは続ける。

 ユウキのことが、







     玉手箱は開けられる





 ユウキは家に着くとまずポストを見た。

 家の鍵が入っているので、それを取り出す。

 鍵を開けて家に入ると、まっすぐ台所に向かい、水を飲んだ。

 何故だろう、とユウキは思う。

 もう何年も前のことを今さら思い出すなんて。

 スマートフォンが鳴る。画面を見る。ショートメールが来ていた。



  子宮頚がん検診、異常なしだった。 滋


 そういえば、とユウキは思い出す。彼女はきょう、病院行ったのだったな。市から検診の知らせを受けて、行くと言っていたのだった。きょうだったのか。

 ユウキは返信した。



(了)