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根木珠たまねぎ日記|(旧 There's No Blog)

電子書籍を個人出版している根木珠、思考を垂れ流す。(旧Don't Believe Everything You Read)

隙間社さんとお茶をした話

サシオフ KDP

 私はファミレスにいた。

 ある人物と待ち合わせをするためだ。

 彼の名は隙間社といった。実に謎めいている存在だ。本当に存在しているのかも定かではない。もしかしたら幻想かもしれない。

 私はホットコーヒーのおかわりを頼んだ。これで二杯目だ。

 水の入ったグラスには水滴が付着していおり、テーブルを濡らしていた。

 この氷なしの水を飲ませるのも忍びないので、自分で飲んでしまってから、店員に新しいものを、と頼んだ。二時間も前に着いてしまった。お腹はコーヒーと水でいっぱいだ。たぷたぷだ。もともと腹は出ているがしかたない。

 店の忙しそうな雰囲気が、私を落ち着かない気持ちにさせた。

 そこへ隙間社であろう人影が見えた。私は驚いた。彼は黒衣の格好だったからだ。

 右には伊藤なむあひ、左には弍杏と書かれた名札のついたパペットがあり、それぞれの手に、はめている。

「こんにちは」

 私が声をかけると伊藤パペットはうなずいた。

「こんにちは」

 弍杏パペットは明るい声で応えた。イメージ通りだった。

「あのお……」

 私が黒衣に声をかけようとすると、しいッと、止められてしまった。

 私は思った。

 隙間社、こいつ正気か……?

 

 彼は、左右のパペットにポテトフライを食べさせていた。

 あたたかく甘い飲み物は、弍の前に置いていた。

 その、彼らの世界に、私は入っていくことができなかった。

 伊藤なむあひ君に「ポテト、食べる?」と言われ、私は、あ、はいと返事をし、一本もらった。おいしかった。

 その彼らは、同じ人間が操っているとは思えない違和感があった。

 まったく違ったしゃべり方をするのだ。ただ隙間社が操作しているのではないのではないか。そう、私は徐々に気づいてきた。

 なむあひのときはポテトを食べ、弍杏のときはココナッツミルクを飲んでいる。

 黒衣となった隙間社は、彼ら自身であり、同時に、彼らではないのだ。

「えーと、」

 真相にたどり着いた私は動揺を隠すことに苦労した。平静を装いながら、私は彼らにこう言った。

 伊藤なむあひ君、弍杏ちゃんは、たしかに存在している。

 彼の中でもあり、それぞれ独立して存在もしている。

 そういうことですね?

 

 隙間社は、無言で、首を横に振っただけだった。黒衣のヒラヒラをひらつかせながら……。

 

 

 

(了)